実験室で化学薬品に殺されないためのハウツー
化学系の研究室で化学薬品を使っている方であれば、必ずSDSシートは確認していますよね?
えっ、SDSシートって何ですか?
今すぐに確認しましょう。
安全データシート(あんぜんデータシート、英: Safety Data Sheet、略称 SDS)とは、有害性のおそれがある化学物質を含む製品を他の事業者に譲渡または、提供する際に、対象化学物質等の性状や取り扱いに関する情報を提供するための文書。
自分が使ってる危ない試薬
自分はTHF(テトラヒドロフラン)という溶媒を頻繁に使ってます。これは融点がめちゃくちゃ低いので、室温ですぐに揮発していく。
最初はすこし手にかかったくらいで、ギャーギャー言っていた。でも今ではすっかり慣れてしまった。使い慣れているという理由で、危険性を過小に見積もってしまう。
最初は、THFの蒸気を少しでも吸い込むのが嫌だったので、ガスマスクを実費で買おうかとも考えた。
けど買おうかなとあれこれ考えるうちに、結局慣れてしまった。
しかし、それではいけません!!
THFのような溶媒はじゃぶじゃぶ使うので、皮膚との接触時間が大きくなりがちです。
どうしても素手に付着する機会があります(ガラス器具を洗う時や、ガロン瓶からこぼれたときなど)
このときに、何気なく鼻をポリポリと掻いたら大変です。ひりひりします。
あと、デカリンが手につくと何度も手を洗う必要があるので、手がカサカサになります。何かしらの手袋をすればいい話なのですが、細かい作業をするときにはどうしても邪魔になります。
さて、THFに話を戻します。このTHF、手にかかったり、気体を吸い込んだとしても、すぐに死んだりするわけではないです。しかし、ちょっとくらい大丈夫という気持ちで、安心しきっているのもよくありません。体に害があるのは確かだから。ちょうどYahoo知恵袋でも、同じような質問がありました。
こちらの質問に対するベストアンサーが参考になるので、全文引用させていただく。
THFは、薄ゴム手袋していても、染み込んでしまったり、ふやけたりします。 素手なら痛みを感じる場合も有ります。
指は脱脂されますが、 横着して、素手で有機溶剤を使っていると、指紋が薄くなるよ。
私は、溶剤を数10種類使いますが、長年使い続けると 指の油気が抜けて 手が滑ります。指紋が薄いからね。
学生が使う量なら知れてますが、 私は仕事使うから、10キロから100キロ単位まで溶剤使用します。
保護具はちゃんと使用してるけど、 手袋が破れたり、 手袋忘れて作業してる場合も有りますからね。
溶剤に合った手袋してくださいね。 溶剤によっては、気化した蒸気で目や脳が損傷受ける場合も有るからね。テトラヒドロフラン素手で触っちゃって手が白いんですけど、皮膚から吸収されて... - Yahoo!知恵袋 ベストアンサーより
そうなんです。THFはゴム手袋を貫通しやがります。THFがしみこまないタイプの手袋もあるのですが、つけたり外したりが面倒で、あまり使いません。
「指紋が薄くなる」とあります。指紋が薄くなるのは嫌ですね。指紋認証ってあんまりやるところないけど、パッと思いつくのはゲーセンのメダルの貸し出しかな。なぜかラウンドワンやアドワーズのメダルゲームは、メダルの預け入れ・引き出しに本人確認が必要。それを指紋認証でやるわけだ。これが苦手。何回指を置いても、「もう一度やり直してください」と出てくるから、イライラが募る。
あとTHFはプラスチックを容易に溶かします。ちょっと油断して机の上に置いてあった関数電卓にTHFを垂らしてしまったときは、ボタン部分のプラスチックが溶けてしまいました。その電卓は使えなくなってしまいました。
専門的な話ですが、マイクロピペットのチップも溶かしてしまいます。
化学薬品に汚染されていないかの診断
4月に化学薬品を取り扱う学生に対する特別な検査を行いました。1年生から3年生までの健康診断は、身長や体重測定、心電図、視力、聴力測定、尿検査を行いました。特別な検査では尿検査と血液検査、問診がありました。
このときはまだ研究室に配属されたばかりで大した実験もしていないので、私の体はまだ汚染されていませんでした(診断結果は問題なしでしたから)
しかし来年の4月にまた同じ検査を受けることになります。自分がどれだけ薬品を吸い込んでしまったのかを振り返ります。
最初は過剰に反応していましたが、最近は良くも悪くもギャーギャー騒がなくなりました。
横着せずに、もっと自分の健康に気を使った方がいいかもしれないですね。
硫化水素はゆで卵の匂い
あと注意すべき薬品は、硫化水素くらいでしょうか?
普通に暮らしていれば、硫化水素で中毒になる人はほとんどいません。箱根山に行ったときは、ゴンドラに乗るときに口を覆うためのおしぼり?みたいなものをもらいました。硫化水素を吸わないようにするためです。
でも私の実験では硫化水素を使います。たくさん使います。
硫化水素のボンベを開閉したときは、腐った卵のにおいがします。硫化水素はトラッパーという、水が入った容器の中を通して、回収します。あれも中の水を時々変えてあげないと効果が半減してしまいます。
化学実験の事故に不可抗力と言えるものはほとんどない
悲しいことですが、化学事故で工学部の学生の命が失われています。
毎年、学科では実験授業の初めに「化学実験の安全ビデオ」を見せられます。
もう3回も同じビデオををみたので、内容を覚えてしまいました。その中で印象的だったのが、「化学実験において不可抗力と言えるものがほとんどない」というフレーズです。
化学実験は、実験する前に下調べ(この試薬はこれが危険、もし引火したらこれをする、全身シャワーの位置はココetc)しておけば、事故にはならないという意味です。
「想定外だった、事前に予知できなかった」なんてことはなく、ほとんどはその人の怠慢ってこと。
溶媒はじゃぶじゃぶ使うので、皮膚との接触時間が大きくなりがちです。
私の場合、デカリンという溶媒を大量に使っていますが、どうしても素手に付着する機会があります(ガラス器具を洗う時や、ガロン瓶からこぼれたときなど)
このときに、何気なく鼻をポリポリと掻いたら大変です。ひりひりします。
あと、デカリンが手につくと何度も手を洗う必要があるので、手がカサカサになります。何かしらの手袋をすればいい話なのですが、細かい作業をするときにはどうしても邪魔になります。
SDSシート以外にも気を付けるべき点
粉のような試薬を使っています。この試薬、天秤で量り取るときに空気中に舞います。それを鼻で吸い込んでしまうと、くしゃみが止まらなくなります。それ以来、マスクをして吸い込まないように注意しながら、取り扱います。
シートが出している危険性以外にも、自分の体質に合わない?試薬があるかもしれません。いつも使っているから、ほかの人がそうしてるからという安易な理由で、適当に化学薬品を扱っていると、大変なことになるかもしれません。
体調管理も実験のうち
皆さんが普段どんな実験をやっているのかは分かりませんが、私の実験は10時間くらい連続で行うものです。だから非常に疲れます。
それで、疲れてるとですね、結構ミスしやすくなります。頭が回らなくなってくるから。
1月は卒論・修論執筆のため、データが必要だ。追い込みをかける時期かも しれませんが、体調管理も大切です。
久しくまじめなことを書いた気がします。
実験で大事なことは、まずケガしないことです。怪我をしないで実験を完了出来たら、たとえ結果が失敗でもよしとするくらいの気負いでいいと思います。
それと、白衣と安全メガネもちゃんとしましょう。最近気づいたことですが、白衣は防寒具としてもなかなか侮れません。意外に暖かいです。
ではでは、良き研究ライフを~